こんにちは、カエル先生です!
皆さんは、マンガやアニメで、何かがぶっ飛ばされて、空のかなたにキラーンと光って消える…なんてシーンを見たことがありますか?
有名どころだと、〇ンパンマンに〇イキンマンがやっつけられて、「バイバイキーン!」と言いながら飛ばされていくシーンとかがありますよね。
あのシーンを見て、大人が「あり得ない(笑)」「なんか光ってる(笑)」なんて言ってしまった日には、子どもから怒られること間違いなしですが、実際、あの現象は、物理学的にはどう説明できるのでしょうか?
今回の記事では、「ぶっ飛ばされてキラーン★はあり得る?」「実現できるの?」などについて、わかりやすく説明します!
「ぶっ飛ばされてキラーン★」は、何が起きている?
マンガやアニメでは、何かが空のかなたに飛ばされるとき、その行先については、「キラーン★」の文字や効果映像で隠されていて、見えていません。
飛ばされたものは、どこまで飛ばされていると思いますか?
3パターン考えられます。
① 遠くの地面に落下する
「ぶっ飛ばされてキラーン★」のあと、どこかの木や建物に引っかかって「とほほ(涙)」なんて言っているシーンがあるマンガやアニメもありますね。
それらのシーンで起きている現象が、これに分けられます。
もう少し、身近なもので考えてみましょう!
皆さんが、ボールを投げると、しばらく飛んで、地面に落ちます。
これは、ボールには質量(重さ)があって、地球には重力があるため、地球の中心、つまり地面の方に引っ張られるからです。
ボールを投げるとき、ボールにはおおまかに3つの力が働きます。
- 推進力(初速)
- 重力(加速度)
- 抵抗力(摩擦力)
そのため、ボールが投げられる様子を横から見ると、図のように飛びます。

ここからは、高校で習う、ちょっと難しい話

力をx軸(横軸)方向とy軸方向(縦軸)方向(必要ならz軸(奥行)も)に分けて計算することで、物体の位置を割り出すことが出来ます。
ボールを投げる場合、ボールの速度を初速v0、加速度を重力加速度gとすることで、時間ごとの位置を計算できます。

高校生の皆さんは、上の図を見て、「学校で解く問題では、抵抗力(空気抵抗)なんて出てこない!」と思うかもしれませんが、問題文に前提として、「ただし、空気抵抗は考えないものとする」と書かれているはずです。
空気抵抗は、本気で考慮しようとすると、気圧や風の有無など、複雑な条件が必要となるため、高校力学では省略されることが多いです。
この内容を「等加速度直線運動」と言いますが、説明しだすと長いので、学校の授業を聞いてください。
② 地球を1周する
ものが飛ばされるとき、その「もの」には、推進力と重力がかかっています。(空気抵抗は、今回は省略します。)
先ほどと同じように、ボールを投げるときをイメージしてください。
ボールを投げると、最初、ボールは斜め上に飛んでいきます。
このとき、ボールにかかるy軸(縦軸)方向の力だけに注目すると、
- ボールを投げた瞬間に与えられた推進力:上向きの力
- 重力:下向きの力
がかかっています。

つまり、理論上、”ボールを投げた瞬間に与えられた推進力=重力”であれば、飛ばされたものは、地面に落ちることなく、地球を1周して、同じ場所に戻ってきます!

このときの投げる速度を数式で表すと、以下のようになります。

G:万有引力定数 M:地球の質量 R=地球の半径
ちなみに、実際に数字を入れて計算してみると、v1=7.9km/sとなります。
このv1、つまり、地面に落ちずにものが戻ってくる速度のことを、「第一宇宙速度」と呼びます。

実際に、地面スレスレでやろうとすると、地球上には建物などの障害物があって、そんなとんでもないスピードのものが飛んできたら大事故になるので、絶対に実演しないようにネ!
③ 宇宙に飛んでいく
先ほどの第一宇宙速度よりも、もっと速い速度で、ものを発射すると、どのように飛ぶでしょうか?
第一宇宙速度から、だんだん速度を上げていくと、地球の周りを楕円を描くように飛ぶようになります。
これは、重力を振り切れていないからです。
では、もっともっと速度を上げていったら、どうなるでしょうか?

…そう、地面からどんどん遠ざかり、重力を振り切って、宇宙に飛んで行ってしまいます!
このようになる、最低限度の速度v2のことを、「第二宇宙速度」と呼びます。

このときの投げる速度を数式で表すと、以下のようになります。

G:万有引力定数 M:地球の質量 R=地球の半径
この式は、運動エネルギーと位置エネルギーの関係から導き出すことができますが、エネルギーの話は、今回の記事で書き出すと長くなるので、省略します。
ちなみに、実際に数字を入れて計算してみると、v2=11.2km/sとなります。
「ぶっ飛ばされてキラーン★」は、実現できるの?
マンガやアニメのように、人が、人やものを投げて、第一宇宙速度や第二宇宙速度を出すことはできません。
それが出来たら、オリンピックのやり投げや砲丸投げで金メダルどころの話ではありません。

よい子のみんなは、絶対に試してみようとしないでくださいね…!
余談ですが。
カエル先生に高校物理を教えてくれた先生は、第一宇宙速度の実演をしようとして、学校の窓ガラスを割り、校長先生にド叱られました。
生徒だった若かりしカエル先生たちは、割れたガラスを掃除しました。
一生忘れられない思い出です。
でも、発射するのが人でなければ、第二宇宙速度を実現しているものがあります。
それは、「宇宙ロケット」です!
宇宙ロケットは、すさまじいエネルギーにより、重たいロケットを空に飛ばし、重力を振り切って、宇宙に飛び出します。
そうやって考えると、宇宙ロケットはロマンのかたまりですよね…!

次のコマで膨らむ夢★
マンガやアニメでは描かれていませんが、「キラーン★」の次のシーンでは…
- ぶっ飛ばされたものが地面に突き刺さっているカモ?
- ぶん投げた人の後頭部に命中するカモ?
- 宇宙に飛び出して、宇宙人に拾われるカモ?
そんな先のコマを想像すると、夢が膨らみますね!



